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VS『運命じゃない人』~もしもし、今どこ?~
2008 / 06 / 23 ( Mon ) 22:22:05
鑑賞日:2008年5月27日(火)

17回表:★★★★★(期待点)

運命じゃない人運命じゃない人
(2006/01/27)
中村靖日

作品詳細はこちら
劇場映画デビュー作のこの『運命じゃない人』で、第58回カンヌ国際映画祭フランス作家協会賞など4賞を受賞した内田けんじ監督。
そんな天才監督の待望の新作『アフタースクール』が公開されるという事で、以前に一度鑑賞済みの本作を改めて見直してみました。
まずはキャストとあらすじです!

【キャスト】
 ・宮田武:中村靖日
 ・桑田真紀:霧島れいか
 ・神田勇介:山中聡
 ・浅井志信:山下規介
 ・倉田あゆみ:板谷由夏

【あらすじ】
 婚約破棄となり、二人で住む家を出てきた桑田真紀(霧島れいか)。婚約指輪を質屋に持って行ったが3500円にしかならず、一人入ったレストランはカップル、家族、友達同士でにぎわっている。寂しさがこみ上げて今にも泣きそうだ。

サラリーマンの宮田 武(中村靖日)は、頼まれ事は断れず、すぐに人を信じてしまう典型的ないい人。結婚前提でマンションを購入した途端、行方知れずになってしまった前の彼女・あゆみ(板谷由夏)のことでさえ、心配しているほどの人の良さだ。

そんな宮田の親友で私立探偵の神田(山中聡)は、宮田のことが歯がゆくて仕方がない。いつまでも前の彼女のことを引きずっていても仕方がないと、宮田のために女の子をナンパしてやる。それはレストランで一人で寂しそうに食事をしている真紀だった。

泊まる家もない真紀に、宮田は自分の家に泊まるようすすめ、二人は宮田の家に帰っていく。そこに行方知れずだったあゆみが現われる。あゆみのあまりの身勝手な言動に、真紀はあきれて宮田の家を出ていってしまう。宮田は追いかけ、勇気を振り絞り真紀の電話番号を聞くことに成功する。宮田にとってはちょっと勇気を出した一晩。

しかし実は彼を取り巻く人々、真紀、神田、あゆみ、そして、あゆみの現在の恋人であるヤクザの組長・浅井(山下規介)の視点から見た一晩はまったく違う夜だった。複雑な人間関係に、浅井の金2000万円が加わり、事態は誰も予想がつかない方向へと転がっていたのだ──
17回裏:★★★★★(満足点)

ある一晩の物語を、5人の登場人物それぞれの視点(正確には3人の視点)で描いて行く手法は、8回の攻防で書いた『バンテージ・ポイント』と類似したモノですが、この二つの映画の違いはその”視点の数”です。

『バンテージ・ポイント』の8回に対し、『運命じゃない人』は3回と絞ることによって、人物関係とあらゆるところに仕掛けられた伏線、そしてその回収具合が凄く分かりやすく、他の視点では見えなかった部分がシンクロしていく構成は天才的で、脚本を勉強している僕からすると、惚れ惚れする程練られてあり、「自分もこんな脚本を書きたい!」と叫ばずにはいられませんでした(笑)

また、特筆すべきはその着眼点で、きっかけは監督の内田けんじ氏が留学先のアメリカから帰国した時の事。

当時は、日本で急速に携帯電話が普及した時期で、内田監督の留学前と留学後では街の様子が一変していたらしく、電話をかけている側が「もしもし、今どこにいるの?」という言葉を発している事にもの凄いカルチャーショック?を受けたというのです。
そう、つまり携帯の普及以前は、必ず電話というものは”ある場所”にかけていた訳ですからね。

そして、この経験から内田監督は”携帯電話は簡単に場所を偽れる”という事に目を付け、この『運命じゃない人』の脚本に至ったそうです。

普段、僕たちが当り前として見逃している中にも、お話のネタはいくつも転がっているのです。それを見付けてすくい獲る視点を”才能”と言うのですね…。

そんな素晴らしい才能の持ち主、内田監督の最新作『アフタースクール』はどのような視点で描かれた物語なのでしょうか?
その才能に嫉妬しながらも(笑)凄く凄く、楽しみにしています♪

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